Not Short Short Stories

ショートショートからタイトルを拾いその場で短編小説風に書くフリースタイルブログ

ショートショートじゃない短編小説その5 おばあちゃんがカモになる惣菜パン

マソソソマソソソです。

暇人すぎて今日は引き続きショートショートじゃない短編小説その5です。

 

タイトル:おばあちゃんがカモになる惣菜パン

 

「あたしゃ入れ歯だからね、パンは噛み切れないし、飲み込めないんだよ。だからさ、あたしの顎にも優しいパンは売ってないもんかね?」

とある70代の女性、トヨさんは昔からのパン好きであるが、身体の衰えによるのか、食べられる物も限定的となり、ついには好きだったパンも柔らかい具の部分しか口に運ぶことができなくなっていた。
残りのパンはというと、いつも陽当たりの良い公園のベンチに腰掛ける時に寄ってくる鳩の餌か、家の食べ物で揚げ物を作る時に使うパン粉へと変わる。
フライが出てくる時は若干トヨさんテイストなフライになるのはこのことが原因のようである。
トヨさんの好きな惣菜パン、それはサラダパンである。一時期、マネーの虎に出場した参加者が
「パン、パン、パン、サラダパン!!」
とリズミカルに紹介した企画商品に虎達が訝しげに視線を送った、サラダパンである。
タマネギ、タマゴ、レタス、ニンジン、等食事でビタミンや食物繊維を摂取するならこれだ!となることから長年愛用しているサラダパン。しかし、どこのパン屋でサラダパンを探しても、トヨさんが咀嚼して、飲み込めるパンにならないことから悔しさが滲み出ていた。
「ババァに優しいサラダパンをおくれ!!」
トヨさんの棺に入れて欲しい商品No.1を勝ち得るサラダパンは未だに存在しない。

トヨさんは、ある日ふと気になる話を耳にする。それは介護施設に通うトヨさんの仲の良い友達タエさんから出た話である。
「あの施設のパンは良いわねえ。食べ易いし、味も濃すぎず薄すぎず丁度いい。パンが米を練って作られていて、サラダがピューレで出るからお代わりしたくなるわ。食べたら食べたで腹持ちもいいし。トヨさんも試食してみない?それとも今度持ってきましょうか?」
トヨさんからは一筋の涙がこぼれていた。トヨさんの念願の求めていたサラダパンに介護施設で出会えること、タエさんの優しさに感服した。
トヨさんは娘夫婦に相談して、タエさんからの紹介で介護施設に入れてもらえないかを聞いてみたが、娘夫婦は金銭上難しく、首を縦に振ることはなかった。かくして、トヨさんは介護施設の入所にあたる無料体験をいいことにタエさんとサラダパンでランチタイムを楽しむ趣味ができた。
「ババァの幸せはサラダパン。これに尽きる!」
トヨさんは右手の拳を握り締め、その拳を天高らかに突き上げたのであった。

 

初めましての方へ↓をご覧下さい。

ネットにショートショート

https://short-short.garden/P-lectureが載っていて

面白そうなので、頭の体操がてらに、

徒然なるままに書いて載せようかと思います。

タイトルはランダムで選択して、即席で

ショートショートにならない短編小説を書いていこうかと思います。